nonoway’s diary

40代、理学療法士の雑記ブログ

真実を書くべきか書かざるべきか

こんにちは。

理学療法士のnonowayです。

 

理学療法士の仕事の一つに、診断書の記載があります。

診断書というのは、このような

障害年金の受給に必要となる、患者さんの障害の度合いを記録する用紙のことです。交通事故後のリハビリの方などは、保険会社から送られてくるものもあります。

本当は、ドクターが記入するものなのですが、身体評価の項目などは、理学療法士に任されることが多いと思います。

私の病院でも、そんなに頻度は多くはないですが、年に数回、このような診断書の記載をお願いされることがあります。

実際にどんな検査をするかというと、全身の各関節の可動域や、筋力の強さを測ったり、感覚の検査や、神経の働きをみたり、また、日常の生活動作がどこまで自分でできるのか、介助が必要なのかといったことを確認していきます。

ひとつひとつの検査の内容自体は、理学療法士がいつも普段のリハビリ中に、患者さんを相手にいつも行っている事なので難しくはないのですが、この診断書に記載する場合は、全ての関節、健康な方の関節も含め、全身の検査を一気にお願いされるので、かなり業務的には負担になります…

特に、うちの病院は予約制ではないので、突発的にそのような検査をお願いされ、毎回、てんてこ舞いで大変になります。。

それで、最近、この診断書の記載をお願いされることがありました。その時リハビリに来られていた他の患者さんに少し待ってもらい、なんとか時間を作り、無事一通りの検査を済ませました。

後は、清書をして、残りの項目をドクターに書いてもらうだけです。事務の方とそのことで話していると、同じ患者さんが以前、10年前ぐらいに作成した診断書のコピーがあるということで、ちょっと見せてもらう機会がありました。

この10年で、この患者さんの状態はどう変わったのかな、なんていう気持ちで以前の診断書を見てみると、驚きの事実が判明しました。

この10年前の診断書には、私が検査した今の現状よりももっと、身体状態は悪く記載されていました。

10年の間に、身体の状態が良くなったんではないの?と思うかもしれませんが、この患者さんは、病気の特徴から考えて、大きな改善を望むのは難しい方です。むしろ、老化による筋力低下で身体状態は徐々に低下しているものだと予想していました。

10年間、リハビリを懸命に続けておられれば、多少の改善はあるでしょう。しかし、10年前に書かれた診断書の内容と今の状態の差は、「リハビリの効果」の一言で済ませられるほどの差ではありませんでした。。

リハビリ業界はスタッフの入れ替わりが激しいので、この10年前に診断書を記載した理学療法士は、もういませんし、私が今の病院に入職する前のことなので、どんな人だったか名前も知りません。

おそらくですが、10年前に診断書を記載した理学療法士の人は、普段の業務に忙殺されるあまりに、この診断書の検査をする時、患者さんに対し、一つ一つ細かく検査をしていくのではなく、病名から大まかに推察し、このような障害だろうと経験則を元に想定した上で検査結果を書いていったのではないかと思います。

同じ理学療法士として、恥ずべき行為だとは思いますが、自分も同じような思いに駆られることは多々あります。。どうしても患者さん一人一人に介入する時間が決まっていますので、1分1秒、いつも時間に追われる毎日。少しでも効率的に仕事を済ませるにはどうすればいいかと考えてしまいます。関節の角度を測る時も、ゴニオメーターと言われる角度計を用いて正確に測らないといけないのですが、目測だけで判断してしまうこともあります。

 

今回、私が検査した結果内容は、10年前の診断書と比べ、状態はかなり改善したものになってしまいました。その検査結果を診断書に書いていた時、ふと、こんなことを考えてしまいました。

「この検査結果を書いてしまったら、この人の年金受給額は下がるんじゃないか・・」

「10年間続けてこられた生活が、私が記載した診断書のせいで、破綻するんじゃないか・・・」

ふと、こんな考えが頭に浮かび、10年前の診断書の内容に準じた検査結果内容に変えてしまおうかと思いました。。。

この患者さんは、決められた年金受給額で、切り詰めた生活をされていると思うと、今、自分が書いている診断書の重みを感じました。

そんな迷いが生じました。何が正しいのかはわかりませんでした。ただ、自分がすべきことは、目の前の患者さんの状態をただ正確に診断書に記載すること。そう思い、私自身が検査した結果を正直にそのまま診断書に記載しました。

 

今回の件を通じ、理学療法士という仕事が、障害をもった患者さんの人生に直結にする重責を担った仕事であるということを再認識しました。

「仕事が忙しい」ということを言い訳にせず、目の前の患者さんの健康で充実した人生をサポートし続けることができるよう、頑張っていきたいと思います。

 

ありがとうございました。

 

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ありがとうございました。